『さまよう刃』 東野圭吾
東野圭吾 の『さまよう刃』、読了しました。 今回もネタバレの予感大。(汗)
ざっとしたあらすじを書いときますね。 これは小説の裏表紙の内容を転記しました。
-蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。
「遺族による復讐殺人」としてマスコミも大きく取り上げる。
遺族に裁く権利はあるのか?
社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は
ええ、お年頃の娘を持つ僕としては、もの凄く切ない、やりきれない内容でした。
その想いを、より強くさせるのは、「加害者が少年」という点です。
つまり、その加害者は、少年であるという理由のみで、どんな犯罪を行おうが
実名は明かされず、量刑も驚くほど軽く済んでしまいます。
被害者からすれば、加害者が少年だろうが、大人だろうが、受けた傷に変わりは
ありません。 その加害者が更生しようが、失ったモノは帰ってきません。
そんな現法案の矛盾を、東野圭吾ワールドで問題提起した一冊です。
結末は...多分、自然な形ではないでしょうか。 全ての読者が望んだ形では
ないでしょうけどね。 なんかこう、スッキリしませんが、しょうがないんでしょうね。
読み終えた後、「さまよう刃」という題名を、僕なりに考えてみました。
加害者を追う父親もそうでしょうし、犯罪を犯し、逃げ続ける危険な加害者もそう。
でも、僕の受け取り方は、現在の日本社会に、このような犯罪を犯す危険性が
ある人間が実際にたくさんいて、その人たちを指すのでは?と、思うんです。
物騒な事件が結構身近にあったりする今日この頃。 そんな「危険な刃」があなたの
隣りに住んでても、全然不思議じゃない世の中です。 物は溢れてて、豊かになった
かもしれんですが、どんどん住みにくい社会になってる気がしてなりません。
今回もそうなんだけど、東野作品の最後の100ページくらいは、凄い力で読み手を
引き込みます。 色んな作家さんの作品を読んでるんだけど、その力は群を抜いて
います。 さすが、僕の好きな作家さんナンバーワン! 次の文庫、早く出ないかな。
| 固定リンク
「 小説」カテゴリの記事
- びっとさんが選ぶ2010年お勧め本ベスト3(2011.01.03)
- 『使命と魂のリミット』 東野圭吾(2010.03.18)
- 講談社文庫特製ブックカバー(2010.01.02)
- 『長い家の殺人』 歌野昌午(2009.10.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
暇なわけでもありますまいに きっちりと定期的に文字に 文章に触れられている びっとさんを尊敬します
今日も 秋葉原で語るのもいやな事件が起きました
この国は 我々の思考は 良識は どこに向かっているのか
そら恐ろしく思った 一日でした
投稿: win-twins | 2008年6月 8日 (日) 21時19分
>winさん
いらっしゃいませ♪
この小説のクライマックスも上野駅界隈で、加害者の少年、
それを追う被害者の父、その父を匿った女性、警察が一同に
会し、一般人を巻き込む大騒動になります。
それでも、昨日の秋葉原の事件の方が、やりきれなく、救い
ようがありません。
この国の一部の人間(同じ人間と思いたくない)のモラルは、
どこへ行ったんでしょうね...
[追記]
今回の件で、愛するご家族を失った方がたくさんいらっしゃる
と思います。
昨日は眠れぬ夜を過ごされたんでしょうし、これからも癒える
事ない、大きな悲しみを背負わされてしまったはずです。
亡くなった方々に心よりご冥福を申し上げるとともに、ご遺族
の方々には、おかけする言葉さえ見つかりません。
加害者にも、家族はいるはずです。
その家族も、今後普通の生活は望めません。
東野圭吾の『手紙』という小説にあった通りだと思います。
犯罪は、全ての人を不幸にします。
プラスになる事だって1つもありません。
そんな簡単な理屈が、何故理解できないんだろうと、今回の
件で本当に寂しい気持ちになりました。
投稿: びっとさん | 2008年6月 9日 (月) 06時19分
こんばんは
いったいこの国は どうなってしまったんだろう
そんな思いにさせられる事件ばかりの今日この頃
ですね・・・
昨日の通り魔殺人
先日の江東区のバラバラ殺人
愛知の女子高生殺害事件
もう 毎日毎日・・・
狂っているとしか思えません
↑東野圭吾さんの本
ガリレオシリーズは読んだのですが
他のは読んだ事なかったのですが
びっとさんのブログを読んで ひかれたのと
このごろの事件とか↑のお話から
思い出した本村さんの事件とかに
どこか 連想されるものがあって
今日 本屋さんで 買って来ました
なんとかしないといけないですよね 日本・・・
投稿: おとめ | 2008年6月10日 (火) 00時29分
>おとめさん
いらっしゃいませ♪
報道される映像を見て、現実に起こっている事とはゆめゆめ
信じ難いんですが、本当の事なんですよね。
首都圏にお住まいのおとめさんは、より身近なので、岡山に
住む僕よりもずっと複雑な思いをされていることでしょう。
「さまよう刃」、買われたんですね!
結構ハードな内容ですので、ご注意下さい。
ここで、東野作品のお勧めベスト3を紹介します。
1.秘密
感動のラスト、傑作です。
2.トキオ
最後の1行は涙モノです。
3.白夜行
氏の大作。やはり外せません。
お時間があったら、是非どうぞ!
投稿: びっとさん | 2008年6月10日 (火) 06時41分