『疾走』 重松清
今日は重松清著『疾走』のご紹介。 重松作品は、どれもこれも考えさせられるんで、
精神的に安定してないと、一緒になって落ち込んじゃったりしちゃうんだよね。(汗)
インパクト大の表紙絵ということもあり、何となく未読だったんだけど、思い切って
手にしてみました。 それにしても、あらためて見るとホント怖い表紙絵じゃな。
瀬戸内海に面したO市の「浜」に生を受けた主人公シュウジ。(明らかに岡山じゃ。)
その短い生涯を綴った物語です。 全編、ずっと重々しくて、特に上巻を読み上げる
のに、かなり時間がかかっちゃいました。 下巻も、重々しさは変わらないんだけど、
急に展開のスピードが上がって、1日で読んじゃいました。
読了後の爽快感は...残念ながら皆無です。 胸の奥にずっしりと重い物が
居座っちゃって、その重い物は暫く消えてくれませんでした。 でも、あの終わり方
しか無いんでしょうね。 ふ~、思い出しただけで、しんどくなっちゃうな。(ため息)
内容はさておき、二人称の語り部の神父さんの教えに、「なるほど」と思いました。
「運命」と「宿命」の違いをシュウジに問うシーンがあって、中学生のシュウジは
答えられません。 神父さん曰く、「『宿命』は、人がいずれ死ぬように誰にも
訪れる事、『運命』は、各人が持っている『すごろく』のような物」だそうです。
その人その人で持っている『すごろく』は、生まれながらに決まってて、どのコマに
止まるかで生き方が変わるんだそうです。 「生まれながらにして、持ってる
『すごろく』が違うんじゃないの?」って、ヒロインの女の子の指摘も印象的でした。
僕の『すごろく』は...どうなんじゃろ? 『あがり』の時に、分かるんかな?
ちなみに、主人公のシュウジは、ことごとく悪いコマに止まってしまいました。
重松作品を初めて読もうと思われてる方には、この『疾走』はお勧めしません。
直木賞を取った『ビタミンF』や、『流星ワゴン』をお読み下さい。 自分自身が
しっかり受け止められている方は、こんな切ない『運命』を抱えた少年の生涯を
垣間見るのも、いい経験になるかもしれません。 興味のある方は、どうぞ♪
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コメント
はじめまして。
びっとさんの本の紹介、いつも興味を持って拝見しております。
実は私は重松清さんの作品は全く読んだことがありませんでした。
びっとさんに背中を押してもらって(表紙の怖いもの見たさも手伝って)、読んでみました。
覚悟を決めてはいたものの、やはり相当重たい内容でしたね。
ちょっと自分の日常生活とかけ離れたところで起こっている出来事のような…
こんな作品もあるんだな~と思い、感慨深かったです。
投稿: めぐぶ | 2009年6月26日 (金) 13時19分
>めぐぶさん
いらっしゃいませ♪
こちらこそ、はじめまして!
小説の記事を読んで下さってる方がいらっしゃるのに
身が引き締まる思いです。
最近、結構いい加減に書いちゃってます。(滝汗)
『疾走』は、ホント重たくて救われない内容ですよね。
シュウジの駆け抜けた短い一生のそこかしこに、生きる
ヒントを散りばめる手法を取った作品だと思います。
記事の文中でも書きましたが、重松作品では『ビタミンF』や、
『流星ワゴン』、お子さんがいらっしゃれば『小さき者へ』
なんかもお勧めです。
めぐぶさんのお勧めも教えて下さいね~♪
投稿: びっとさん | 2009年6月27日 (土) 07時06分