『終末のフール』 伊坂幸太郎
今日は伊坂幸太郎著、『終末のフール』のご紹介。 前回の『魔王』が「あれれ~」って
出来だったんで、今回は期待に沿ってくれるんでしょうか? まあ、記事にしてる時点で
僕の心の琴線の何処かに触れたって事なんだけどね。(笑)
「8年後、地球に小惑星が衝突して、人類は滅亡する。」と、公式に発表されて
5年後の仙台を舞台にした短編集です。 発表直後、パニックに陥った人々の
騒乱が静まり、一時的と思われる落ち着きを取り戻した世界を描いています。
「終末のフール」、「太陽のシール」、「籠城のビール」、「冬眠のガール」、「鋼鉄の
ウール」、
韻を踏んだ題名(中には苦しいのもありますが。笑)が著者らしいし、微妙に
現実と距離を置いて展開される作風は、まさに伊坂ワールドと呼べる物です。
『オーデュボンの祈り』ほどは、現実と乖離していないですけどね。(笑)
この8作品の中で、一番心に残ったのは「鋼鉄のウール」です。 主人公は中3の
男子。 小学生の頃、ふと思いついて始めたキックボクシングだけど、地球が滅亡
する事が周知となった騒動で、尊敬していた父親は部屋に引きこもり、イライラを
ずっと抱えて日々を過ごします。 数年間うやむやになっていたジムに顔を出して
みると、騒動前と何も変わらずサンドバッグを叩き続けるチャンピオンと、会長の
姿がそこにありました。 主人公も、何となく、またジムに通い始めるんだけど...
って感じの展開です。 このチャンピオンは、K-1の「武田幸三選手」をモチーフに
しているそうです。 これが、実にかっこよく描かれてるんですよ。 そのチャンプが
口にしたある言葉に心を揺さぶられました。 辛い練習をきつく感じたチャンプが
自分自身に投げかける言葉で、主人公も道を外しそうになった時に、この言葉を
思い出し、我に帰ります。
よくテレビの世界で、「座右の銘は?」と尋ねられた人が、即座に返答をしているのを
みて、「すっごいな~」と思ってました。 「座右の銘」なんて意識した事なんてないし、
それを心のいつでも取り出せるところに置いてあるのを不思議に思っていました。
でも、そんな僕にも「座右の銘」が見つかりました。 それだけでも、この本を読んだ
甲斐があるってモンです。 お気に入りの「鋼鉄のウール」が余りに印象的だった
んで、他の7作品は正直霞んじゃいます。(笑) 気になる方は是非どうぞ♪
えっ、その言葉が気になりますか? じゃあ、特別に教えちゃいますね。
『おい俺、俺は、こんな俺を許すのか?』
くじけそうになった時、横着を考えた時、自分の言動で人を傷つけそうになった時、
色んなシチュエーションで、この言葉を引っ張り出そうと思ってます。
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